株式投資について調べていると、「現物取引」とは別に「信用取引」という言葉を目にすることがあります。
信用取引とは、委託保証金を証券会社に担保として預け、証券会社から資金または株式を借りて売買する取引です。自分の資金以上の金額を取引したり、株式を借りて先に売る「信用売り」を行ったりできることが特徴です。
その一方で、信用取引には現物取引にはないリスクやコストがあり、委託保証金を上回る損失が発生する可能性もあります。
今回は、信用取引とはどのような仕組みなのか、現物取引との違いやメリット、リスクについて初心者向けに整理してみたいと思います。
信用取引とは何か?
信用取引とは、証券会社に委託保証金を担保として預け、資金または株式を借りて行う株式取引です。
通常の株式売買では、買う場合には買付代金を自分で用意し、売る場合には自分が保有している株式を用意します。一方、信用取引では証券会社から買付資金や売付株式を借りることによって取引を行います。
信用取引には、大きく分けて「信用買い」と「信用売り」があります。
信用買いでは証券会社から資金を借りて株式を購入し、信用売りでは証券会社から株式を借りて、その株式を市場で売却します。
つまり信用取引とは、自分が現在持っていない資金や株式を借りることで、現物取引よりも取引の幅を広げることができる仕組みだと考えると分かりやすいでしょう。
出典:日本取引所グループ「信用取引の目的・仕組み」「信用取引制度の概要」
現物取引との違い
信用取引と現物取引の大きな違いは、「自分が持っている資金や株式だけで取引するかどうか」です。
通常の現物取引では、買方は買付代金の全額を用意し、売方は売却する株式を用意して取引します。信用取引では、証券会社から資金や株式を借りることで、手元の資金を超える金額の売買や信用売りが可能になります。
主な違いを整理すると、次のようになります。
| 項目 | 現物取引 | 信用取引 |
|---|---|---|
| 投資資金 | 自分の資金 | 資金を借りることができる |
| 信用売り | できない | できる |
| 取引金額 | 基本的に保有資金の範囲 | 保証金を上回る取引が可能 |
| 損失 | 現物買いでは基本的に投資額が上限 | 保証金を上回る可能性がある |
| コスト | 売買手数料など | 金利や貸株に関する費用などが発生する場合がある |
通常の信用取引では、約定金額の30%以上の委託保証金が必要とされているため、制度上は保証金の最大約3.3倍まで取引することができます。ただし、銘柄への規制や証券会社の取引条件などによって、必要な保証金率がこれより高く設定される場合もあります。
そのため、たとえば100万円の保証金があるからといって、「自分のお金が約330万円に増えた」と考えるのは正しくありません。
約330万円分の取引が可能になるということは、言い換えれば、それだけ大きな金額の値動きによる影響を受けるということです。
出典:日本取引所グループ「信用取引制度の概要」「信用取引の目的・仕組み」「信用取引に関する規制等」、日本証券業協会「信用取引のリスクについて」
信用買いとは?
信用買いとは、証券会社から資金を借りて株式を購入する取引です。
「これから株価が上昇すると思うが、手元の資金だけでは十分な株数を購入できない」といった場合に、証券会社から買付資金の融資を受けて株式を購入することができます。
通常の信用取引では、約定金額の30%以上の委託保証金が必要です。たとえば100万円の取引をする場合、原則として30万円以上の保証金が必要となります。
この仕組みによって、株価が予想通りに上昇すれば、自己資金だけで現物株を購入した場合よりも大きな利益を得られる可能性があります。
しかし、その反対に株価が下落した場合には損失も拡大します。日本証券業協会も、信用取引では差し入れた委託保証金を上回る損失が生じる可能性があると注意を促しています。
つまり、
「100万円しか持っていないのに300万円以上のお金を手に入れた」
のではなく、
「100万円程度の自己資金で300万円以上の値動きの影響を受ける取引をしている」
と考えたほうが、信用取引の性質を理解しやすいでしょう。
出典:日本取引所グループ「信用取引の目的・仕組み」「外国株式信用取引の特徴やリスクとは?」、日本証券業協会「信用取引のリスクについて」
信用売り(空売り)とは?
信用取引には、株価の下落によって利益を狙う「信用売り」という方法もあります。
信用売りとは、証券会社から株式を借り、その株式を市場で先に売却する取引です。信用取引による売りは「空売り」の一種に含まれます。
通常の株式投資では、
「安く買う → 高く売る」
ことで利益を得ます。
信用売りでは順番が逆になり、
「高く売る → 安く買い戻す」
ことで利益を狙います。
たとえば、ある株式を1株1,000円で信用売りし、その後800円で買い戻したとします。
この場合、
1,000円-800円=200円
となり、諸費用を考慮しなければ1株あたり200円の利益となります。
一方で、1,000円で信用売りした株が1,500円まで上昇した場合は、500円の損失になります。
(信用売りの仕組みに基づく計算例)
信用売りで特に注意したいのは、株価が上昇し続けた場合に損失が大きくなる可能性があることです。
現物で購入した株式の場合、株価が0円になれば購入代金を失いますが、それ以上株価が下がることはありません。
しかし株価の上昇幅にはあらかじめ決められた上限がないため、信用売りでは株価が大きく上昇するほど買い戻すために必要な金額が増え、損失も大きくなります。
(信用売りの仕組みから導かれるリスク。日本証券業協会も信用取引では委託保証金を超える損失のおそれがあると説明しています。)
出典:日本取引所グループ「空売り規制」「用語集『空売り』」「外国株式信用取引の特徴やリスクとは?」
信用取引のメリット
信用取引には大きく2つのメリットがあるので、それぞれ説明していきます。
- 委託保証金を担保として、その金額を上回る取引ができること
通常の信用取引では保証金の最大約3.3倍の取引が可能であり、現物取引と比べて資金効率を高めることができます。そのため、元手が少ない人でも、大きな利益を目指すことができます。 - 株価の下落局面でも利益を狙えること
信用売りを利用すれば、株式を借りて先に売却し、株価が下がったところで買い戻すことで、その価格差から利益を得ることができます。
また、空売りは単純に株価の下落から利益を狙うだけでなく、自分が保有する株式の値下がりによる損失を抑える「ヘッジ」の手段として使われることもあります。
出典:日本取引所グループ「信用取引制度の概要」「用語集『空売り』」
信用取引のデメリットとリスク
信用取引の最大の注意点は、レバレッジによって利益だけでなく損失も拡大することです。
委託保証金を超える金額を取引するため、相場が予想とは反対方向に動いた場合には、差し入れた委託保証金を上回る損失が生じることがあります。
つまりレバレッジとは、
「利益を大きくできる仕組み」
であると同時に、
「損失も大きくなる仕組み」
でもあります。
また、信用取引では「追証(おいしょう)」と呼ばれる追加保証金が必要になる場合があります。
JPXの説明では、株価変動などによる損失や費用を差し引いた委託保証金が売買代金の20%を下回った場合、追加の保証金を証券会社に差し入れる必要があります。
また、必要な保証金を所定の期日までに差し入れなかった場合には、損失が発生している状態でも建玉の一部または全部が決済される場合があります。
さらに、信用取引では証券会社から資金や株式を借りて取引するため、現物取引にはない費用が発生します。
たとえば制度信用取引の信用売りでは、株不足が発生した場合に「品貸料(逆日歩)」と呼ばれる費用を支払う場合があります。実際の金利や貸株料などの取引条件については、利用する証券会社ごとに確認する必要があります。
出典:日本取引所グループ「信用取引の目的・仕組み」「外国株式信用取引の特徴やリスクとは?」、日本証券業協会「信用取引のリスクについて」
信用取引は初心者にも必要なのか?
では、これから株式投資を始める人も信用取引を利用したほうがよいのでしょうか。
個人的には、無理に利用する必要はないと考えています。
企業の業績や将来性を調べ、企業価値に対して割安だと考えられる株式を購入し、その企業が成長するのを中長期で待つ。
このような投資であれば、現物取引だけでも行うことができます。
また、信用取引では委託保証金を担保として、自分の資金を上回る金額の取引が可能になります。そのため利益を大きくできる可能性がある一方、委託保証金を上回る損失が発生する可能性もあります。
株価の変動などによって保証金が一定の基準を下回った場合には、追加で保証金を差し入れる必要が生じることもあります。
特に投資を始めたばかりの段階では、こうした信用取引特有の仕組みやリスクを十分に理解したうえで、利用するかどうかを判断することが重要でしょう。
(日本証券業協会の信用取引に関する注意喚起を踏まえた筆者の見解です。)
出典:日本取引所グループ「信用取引の目的・仕組み」、日本証券業協会「信用取引のリスクについて」
まとめ
信用取引とは、証券会社に委託保証金を預け、資金や株式を借りることで、自分の資金を上回る取引や信用売りを行える仕組みです。
通常の信用取引では委託保証金の最大約3.3倍まで売買することができ、株価の下落局面でも信用売りによって利益を狙うことができます。
一方で、信用取引では委託保証金を上回る損失が発生したり、相場の変動によって追加保証金が必要になったりする可能性があります。
信用取引は、「危険だから絶対に使ってはいけないもの」というわけではありません。
仕組みを理解して利用すれば、投資家が使える選択肢の一つになります。
しかし、
「少ない資金で簡単に大きく儲けられる方法」
とだけ考えて利用するのは危険です。
利益を大きくできる可能性がある仕組みは、同時に損失を大きくする可能性がある仕組みでもあります。
信用取引を利用するのであれば、こうした特徴やリスクを十分に理解し、自分の資金や投資方針に合っているかを考えたうえで判断することが重要でしょう。
出典:日本取引所グループ「信用取引制度の概要」「信用取引の目的・仕組み」、日本証券業協会「信用取引のリスクについて」
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