なぜ金は大きく下落しているのか?|安全資産とされる金が売られる理由

うちの母は最近「金は落ちない安全資産だから」といって金を買い込んでいました。
ところが一転、直近1か月で約12%安と、金の価格は大きく下落し、母はとても落ち込んでいます。
同じような動きをして「どうしてこうなった?」と思っている方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、金の相場がなぜここまで下がったのかを解説していきます。

金は本来「有事に買われる安全資産」として知られています。
それなのに今回は、中東情勢の緊迫化や原油高といった不安材料があるにもかかわらず、金価格は大きく下落しました。直近の相場では、金は3週連続で弱含みとなり、週ベースでも大きく売られる場面が出ています。

今回の下落を理解するうえで重要なのは、単純に「リスクが高まったから金が買われる」という構図ではなかったことです。
むしろ市場は、原油高によるインフレ再燃懸念を強く意識しました。
中東情勢の悪化でエネルギー価格が上昇すると、「物価が再び上がるのではないか」という警戒が強まります。実際、ロイターは中東情勢を受けて原油やガス価格が急騰し、各国中銀がインフレ再加速を警戒していると報じています

インフレ懸念が強まると、今度は「FRBは簡単に利下げできないのではないか」という見方につながります。
(FRBってなに?という方への詳しい解説はこちらの記事をご参照ください)
利下げ期待が後退すれば、米金利は高止まりしやすくなり、ドルも買われやすくなります。実際、3月の金相場についてロイターは、ドル高と高金利観測が金の重しになったと伝えています

ここで金にとって不利になるのが、「金は利回りを生まない資産」だという点です。
米国債やドル預金のように利息が期待できる資産の魅力が高まると、利息を生まない金は相対的に見劣りしやすくなります。さらにドル高が進むと、ドル建てで取引される金は海外投資家にとって割高に映り、買いが鈍りやすくなります。

つまり今回の金安は、

原油高 → インフレ懸念の再燃 → 利下げ期待の後退 → ドル高・高金利 → 金売り

という流れで見ると整理しやすいです。
安全資産としての金が完全に否定されたわけではなく、今回はそれ以上に「インフレ」「金利」「ドル」の力が強く働いた、ということです。

加えて、足元の金相場はもともと高値圏にあったため、利益確定売りが出やすい地合いでもありました。
相場が過熱した状態では、悪材料がひとつ出るだけでも売りが連鎖しやすくなります。今回の下落も、ドル高や金利上昇だけでなく、そうしたポジション整理の売りが重なって大きくなった面があると見られます。

今回の値動きから分かるのは、金はただ「不安だから価格が上がる」資産ではないということです。
地政学リスクそのものよりも、その結果として原油が上がるのか、インフレが再燃するのか、FRBの利下げが遠のくのかといった連鎖の方が、相場には強く効くことがあります。

今回の金急落は、まさに
「有事で金が買われた」のではなく
「有事がインフレを呼び、ドルと金利が勝ったことで金が売られた」局面
だったといえるでしょう。

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