読者の皆さんは、現在の投資状況について、家族や信頼できる人に共有したことがあるでしょうか?
自分の財産を使って投資をする以上、万が一自分の身に何か起こった場合に備えておくことは大切です。
特に、インターネット上で取引を完結できるネット証券では、本人以外の家族が口座の存在を把握していないケースも考えられます。
そこで今回は、投資を始めたら信頼できる相手に残しておきたい情報と、その手段についてまとめてみました。
利用している証券会社の運用管理を考えてみる
投資を始めたばかりの頃は、一つの証券会社だけを利用している人が多いと思います。
しかし、投資を続けているうちに、
- 日本株はA証券
- 米国株はB証券
- 投資信託はC証券
- 確定拠出年金は勤務先の制度
というように、資産の管理先が少しずつ増えていくことがあります。
自分自身は普段から利用しているため把握できていても、家族から見れば、どの金融機関に何の口座があるのか分かりません。
そのため、まずは利用している証券会社や金融機関を一覧にしておくことをおすすめします。
記録しておきたい主な情報は、次のようなものです。
- 証券会社や金融機関の名称
- NISA口座、特定口座、一般口座などの口座区分
- 日本株、外国株、投資信託など、主に保有している商品の種類
- 証券会社に登録しているメールアドレス
- 証券会社の問い合わせ窓口
- 連携している銀行口座
- 取引報告書や年間取引報告書の保管場所
ただし、ログインIDやパスワード、暗証番号、二段階認証のコードまで、家族が簡単に見られる場所へ残すことはおすすめできません。
家族が本人のアカウントへログインして取引するのではなく、万が一の際には証券会社へ連絡し、正式な相続手続きを行う必要があります。
相続手続きの流れや必要書類は証券会社や個別の状況によって異なります。証券会社では、戸籍謄本や遺産分割協議書など、状況に応じた書類の提出を求める場合があります。
家族に残しておくべきなのは、口座を自由に操作するための情報ではなく、どこに資産があり、どこへ問い合わせればよいのかが分かる情報です。
口座が存在することを家族に伝える重要性
証券口座を持っていることを家族に話すのは、少し抵抗がある人もいるかもしれません。
投資額や保有銘柄、含み益や含み損まで、すべてを詳しく共有する必要はないと思います。
それでも、少なくとも「どこの証券会社に口座があるのか」という情報は、信頼できる家族などに伝えておいた方がよいでしょう。
口座の存在が分からなければ、家族は証券会社へ問い合わせることもできません。
証券会社によっては、取引店や口座番号が分からない場合の照会手続きも用意されていますが、相続関係や本人の死亡を確認するための書類が必要になります。あらかじめ証券会社名が分かっているだけでも、残された家族の負担を軽くできるはずです。
伝え方としては、直接話しておくほかに、次のような方法があります。
- エンディングノートに記載する
- 緊急時に確認してほしい書類を一つのファイルにまとめる
- 証券会社の一覧を印刷して保管する
- 信頼できる家族に保管場所だけを伝える
- 一定期間ごとに情報を見直す
ここでも、IDやパスワードそのものを記載する必要はありません。
「楽天証券とSBI証券に口座がある」「関連書類は机のファイルに保管している」といった情報だけでも、何も伝えていない状態とは大きく異なります。
投資について詳しくない家族の場合、株式や投資信託がどのような形で管理されているのか分からないこともあります。
そのため、口座の存在だけでなく、万が一の際には「勝手にログインや売却をせず、まず証券会社へ連絡してほしい」と一言添えておくと安心です。
保有資産の一覧をどう整理するか
証券会社の一覧を作ったら、次に保有資産についても整理してみましょう。
ただし、株式や投資信託の価格は毎日変動します。
そのため、常に最新の評価額を記録し続けようとすると、管理そのものが大きな負担になってしまいます。
資産一覧を作る目的は、資産額を一円単位まで正確に残すことではありません。
大切なのは、どのような資産を、どこに保有しているのかを把握できる状態にすることです。
例えば、次のような項目を表にしておくと分かりやすくなります。
| 項目 | 記載する内容の例 |
|---|---|
| 金融機関 | 利用している証券会社や銀行 |
| 口座区分 | NISA、特定口座、一般口座など |
| 商品区分 | 国内株式、外国株式、ETF、投資信託、債券など |
| 主な保有銘柄 | 銘柄名やファンド名 |
| 保有数量 | 株数や口数 |
| 確認日 | 情報を更新した日 |
| 備考 | 配当金の受取方法、関連書類の場所など |
保有銘柄が多い場合は、すべてを手書きするのではなく、証券会社の残高画面や取引報告書を定期的に保存する方法もあります。
半年に一度、あるいは年末など、更新する時期を決めておけば管理しやすいでしょう。
また、信用取引やFX、先物・オプション取引などを利用している場合は、その情報についても分かるようにしておく必要があります。
なぜなら、現物株や投資信託とは異なり、未決済の建玉が残っている可能性もあるためです。実際に証券会社によっては、信用取引などの建玉がある場合、通常とは異なる対応が必要になることを案内しています。
資産一覧は家族のためだけでなく、自分自身のポートフォリオを見直すためにも役立ちます。
複数の証券会社に資産が分散していると、同じような銘柄や投資信託を重複して保有していることもあります。
定期的に一覧へまとめることで、自分の投資方針や資産配分を確認する機会にもなるでしょう。
遺言書や遺言執行者という選択肢
証券会社や保有資産の一覧は、財産の存在を家族へ伝えるためのものです。
一方で、「誰に、どの財産を、どのように引き継いでほしいのか」という希望がある場合には、遺言書について考える必要があります。
家族へのメモやエンディングノートは、自分の考えを伝える手段としては役立ちますが、それだけで法律上の遺言書になるとは限りません。
遺言書がある場合は、原則として遺言の内容に沿って相続手続きが進められます。遺言書がない場合などには、民法のルールや相続人による遺産分割協議に基づいて、財産の分け方を決めることになります。
投資資産についても、
- 特定の株式を家族に引き継いでほしい
- 保有資産を売却して現金で分けてほしい
- 特定の相手へ一定の財産を残したい
といった希望があるかもしれません。
このような遺言の内容を実現する役割を担う人が、遺言執行者です。
遺言執行者は、遺言の内容を実現するために、相続財産の調査や管理、財産目録の作成、必要な名義変更などの手続きを進めます。
遺言書で遺言執行者が指定されていない場合や、指定された人がいなくなった場合には、利害関係人の申立てによって家庭裁判所が遺言執行者を選任する制度もあります。
遺言執行者の具体的な役割や選任方法については、以下の記事で詳しく解説されています。
参考:遺言執行者とは何かを徹底解説|役割・義務・選任方法と相続手続きのポイント | メディア | 神奈川県横浜市の弁護士なら相続に強い鶴見総合法律事務所
遺言書や遺言執行者が必要かどうかは、家族構成や保有資産、本人の希望によって異なります。
投資資産を持っているからといって、必ず遺言書を作らなければならないわけではありません。
しかし、財産の引き継ぎ方について具体的な希望がある場合や、相続人が複数いる場合、家族関係が複雑な場合などには、早めに検討しておく意味があるでしょう。
法律や税務は専門家へ確認すること
株式や投資信託の相続では、通常の預貯金とは異なる注意点があります。
例えば、NISA口座で保有していた株式や投資信託を相続した場合、そのまま相続人のNISA口座へ移すことはできません。
日本証券業協会の案内では、相続した上場株式などは、相続人の特定口座または一般口座で受け入れることになります。
また、上場株式の相続税評価についても、単純に証券会社の画面に表示されている現在価格を使用するとは限りません。
参考:日本証券業協会「NISAのよくある質問(Q73)」
国税庁では、原則として相続が発生した日の最終価格を基準としつつ、その月、前月、前々月の月平均額との比較によって評価する方法を示しています。
参考:国税庁「No.4632 上場株式の評価」
このように、投資資産の相続には、証券会社での手続きと、法律上の手続き、税務上の計算がそれぞれ関係します。
自分や家族だけで判断せず、必要に応じて次のような専門家や窓口へ確認することが重要です。
- 証券口座の移管や解約について → 利用している証券会社
- 遺言書や遺産分割、相続上の問題について → 弁護士
- 相続税の申告や財産評価について → 税理士
- その他の相続手続きについて → 内容に応じた専門家
特に、相続財産の金額が大きい場合や、相続人が複数いる場合、海外の株式や金融機関を利用している場合には、手続きが複雑になる可能性があります。
困ったときは、インターネット上の情報だけで判断するのではなく、自分の状況に合った専門家へ相談するようにしましょう。
なお、本記事は投資資産の管理や情報整理について紹介するものであり、個別の法律・税務上の判断を行うものではありません。
まとめ
今回は、投資を始めたら家族や信頼できる相手に残しておきたい情報について紹介しました。
証券口座や保有資産について、最低限整理しておきたいポイントは次のとおりです。
- 利用している証券会社を一覧にする
- 口座の存在を信頼できる家族などに伝える
- 保有資産の種類や管理先を定期的に整理する
- パスワードではなく、問い合わせ先や書類の場所を残す
- 財産の引き継ぎ方に希望がある場合は遺言書を検討する
- 法律や税金については専門家に確認する
投資は、将来の生活をより良くするために行うものです。
だからこそ、自分が資産を管理できなくなった場合や、万が一のことが起きた場合についても、あらかじめ考えておく必要があります。
資産の一覧を作ることや、証券会社の名前を家族に伝えることは、それほど難しい作業ではありません。
まずは現在利用している証券会社を書き出すところから、少しずつ準備を始めてみてはいかがでしょうか。
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