日本時間の4月9日(木)現在、一時停戦のもとで、パキスタン仲介によるアメリカとイランの停戦協議が実施される見通しです。
今回は、現時点で判明している事実を整理したうえで、停戦協定が合意に至った場合と、破談になった場合に分けて、株式市場への影響を考えてみたいと思います。
現時点でのおさらい
今回の枠組みは、パキスタン仲介のもとで米国とイランが2週間の停戦に入るというものです。イラン外務省掲載のアラグチ外相名義の声明では、「イランへの攻撃が止まるなら、防衛作戦を停止する」とし、さらにホルムズ海峡は2週間、安全通航を可能にすると明言しています。米ホワイトハウスも、イランが停戦とホルムズ海峡再開に応じ、より広い和平交渉に入るとの立場を示しています。
ただし、交渉の中身はまだかなり不安定です。
Reutersによると、米側の15項目案には高濃縮ウラン在庫の除去、濃縮停止、弾道ミサイル計画の抑制、地域同盟勢力への支援縮小などが含まれていた一方、イラン側の10項目案は濃縮継続や制裁解除などを前提にしており、両者にはなお大きな隔たりがあります。
さらに、イスラエルはこの停戦はレバノンでの軍事行動停止を含まないと説明しており、ここがすでに大きな火種になっています。
協議開始時期については、イラン側声明や複数報道で10日(金)前後にイスラマバードで協議入りと伝わる一方、Reutersの別稿では「土曜日開始」との記述もあり、日程の細部はまだ流動的です。少なくとも、10日前後に本格交渉が始まる見通しと理解しておくのが無難でしょう。
停戦合意に至った場合の相場観
市場はすでに「停戦前進」に対してかなり素直に反応しています。
Reutersによると、停戦合意を受けて欧州株は大幅高となり、STOXX600は年初来でも目立つ上昇を記録しました。米国株もダウ +2.85%、S&P500 +2.51%、ナスダック +2.80%とそろって上昇し、VIXも低下しました。原油は急落し、ReutersはWTIとBrentがともに100ドル割れで引けたと伝えています。
このまま停戦が維持され、10日前後の協議が無難に進むなら、まず起きやすいのは典型的なリスクオンです。具体的には、
- 原油安を受けた航空・旅行・消費関連の戻り
- エネルギーコスト低下を材料にした景気敏感株やハイテク株の反発
- 金・原油・防衛関連への資金集中の一服
が考えられます。実際、Reutersは米国市場で航空・クルーズなどが大きく上昇し、逆にエネルギー株が下落したと報じています。
日本株でも同じ構図になりやすく、停戦維持なら輸送、機械、半導体、景気敏感株に追い風が出やすい一方、直近まで地政学リスクで買われていた原油高メリット株や一部ディフェンシブは相対的に鈍くなる可能性があります。特に今回の相場は、ホルムズ海峡の正常化期待が強く意識されているため、「原油がどこまで落ち着くか」が株高の持続性を左右しそうです。
停戦が破談になった場合の相場観
一方で、破談シナリオはまだ十分ありえます。
Reutersによると、停戦発表後もイスラエルはレバノンへの攻撃を継続し、イラン側はこれを停戦条件違反と受け止めています。イランの国会議長ガリバフ氏は、こうした状況では交渉は「不合理」だと述べており、米副大統領バンス氏も、イランがレバノン停止込みで理解していた可能性に言及しています。つまり、「停戦の対象範囲」そのものが一致していないのです。
もし協議が破談、あるいは停戦が早期に崩れるなら、市場は再びリスクオフへ傾きやすいです。
もっとも大きいのは原油です。今回の株高は、ホルムズ海峡の再開期待と供給不安の後退をかなり織り込んだ動きと見られます。
したがって破談となれば、原油は再上昇しやすく、エネルギーコスト再拡大懸念から株式市場全体の重しになりやすいでしょう。Reutersも、今回の停戦で原油が急落し、それが株高につながったと明確に伝えています。
その場合は、
- 金やドルへの逃避
- 景気敏感株・グロース株の再失速
- 防衛・資源関連の再物色
- VIX上昇
といった流れが戻りやすいと考えられます。
すでにReutersは、停戦発表で金が上げ幅を縮小し、株が急反発したと報じており、逆回転も十分起こりうる構図です。特に、停戦協議の破談がホルムズ海峡の再制限とセットになるなら、前回以上に市場は神経質になる可能性があります。
今後注意すべき焦点
まず最大の焦点は、10日前後に始まる協議が実際に開かれるかです。現時点では「予定」は出ていますが、Reutersはすでにイラン側が交渉参加に否定的な姿勢を見せたことも報じています。開催有無そのものが最初の関門です。
次に重要なのは、停戦の対象範囲です。イラン側はレバノンを含む全面的な停止を想定している一方、イスラエル側の認識はそれとは異なっています。このズレが埋まらない限り、表向き停戦でも実質的には不安定なままです。
3つ目は、核・制裁・ホルムズ海峡の3点セットです。米側は濃縮停止やウラン管理を求め、イラン側は濃縮容認や制裁解除を前提にしています。ここが最終的に折り合わなければ、2週間の停戦は単なる時間稼ぎに終わるおそれがあります。また、ホルムズ海峡は「完全正常化」ではなく、現時点では2週間の安全通航を調整するという段階にとどまっています。
市場面では、原油・金・株価指数のどれが先に反応するかを見たいところです。今回の相場はかなり分かりやすく、停戦期待で原油下落→株高→エネルギー株安という反応が出ました。今後もこの連動が続くなら、ニュースの見出しそのものより、まず原油の反応を見るのが実務的にはいちばん分かりやすいと思われます。
まとめ
現時点で整理すると、米イランの停戦枠組みは一定の前進ではありますが、まだ「恒久和平の入り口」に立った段階にすぎません。イラン外務省声明とホワイトハウス発表はともに2週間の停戦とホルムズ海峡の安全通航を示していますが、核開発、制裁、レバノンの扱いでは依然として大きな隔たりがあります。
相場としては、
停戦維持ならリスクオン
破談なら再びリスクオフ
という整理でよさそうです。
停戦が続けば原油安を通じて株式市場には追い風が出やすく、逆に崩れれば金・ドル・原油が再び買われやすくなります。
すでに市場はこのシナリオに沿って大きく動いており、今後は協議の実施、レバノンの扱い、原油の動きが最大の注目点になりそうです。


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