配当金生活にはいくら必要?FIRE・サイドFIREと4%ルールの考え方を初心者向けに解説

投資を続けていると、一度は「配当金だけで生活できたらいいな」と考えることがあると思います。

株式を保有していれば、企業によっては配当金を受け取ることができます。
また、投資信託やETFを取り崩しながら生活する考え方もあります。

こうした考え方と関係が深いのが、FIREです。

FIREとは、経済的自立を達成し、働き方や生活の自由度を高める考え方です。
完全に仕事を辞めるフルFIREだけでなく、生活費の一部を資産収入でまかないながら働くサイドFIREという考え方もあります。

ただし、配当金生活やFIREには、夢のある面だけでなく、現実的な注意点もあります。

この記事では、株を保有していると配当金がどれくらいもらえるのか、FIREにはどれくらいの資産が必要なのか、そして配当金生活の落とし穴について整理します。

FIREとは何か

FIREとは、Financial Independence, Retire Early の略で、経済的自立と早期リタイアを目指す考え方です。
ただし、FIREという言葉は、必ずしも「一生働かない生活」を意味するものではありません。

実際には、いくつかの形があります。

生活費のほぼすべてを資産収入や資産の取り崩しでまかなうのが、一般的にイメージされるフルFIREです。

一方で、生活費の一部を投資収益でまかない、足りない部分は副業や労働収入で補う考え方もあります。
これがサイドFIREです。

個人的には、いきなり完全なFIREを目指すよりも、まずは資産収入によって生活の選択肢を増やす、という考え方の方が現実的だと思います。

投資による収入が少しでも増えれば、働き方を選びやすくなります。
残業を減らす、転職の選択肢を持つ、副業に挑戦する、精神的な余裕を持つ。

こうした意味でも、FIREは単に仕事を辞めるためだけの考え方ではありません。

株を保有すると配当金はいくらもらえるのか

株式を保有していると、企業によっては配当金を受け取ることができます。

配当金は、企業が得た利益の一部を株主に分配するものです。
ただし、配当金は必ず支払われるものではなく、企業の業績や方針によって増えたり、減ったり、支払われなかったりすることもあります。
金融庁の資料でも、配当金は企業の判断によって支払われない場合があると説明されています。
出典:金融庁「NISAを利用する皆さまへ

配当金の目安を考えるときによく使われるのが、配当利回りです。
計算式は次のようになります。

年間配当金 = 投資元本 × 配当利回り

たとえば、配当利回りを年3%と仮定すると、受け取れる配当金の目安は次のようになります。

投資元本配当利回り3%の場合の年間配当金
100万円3万円
500万円15万円
1,000万円30万円
3,000万円90万円
5,000万円150万円
1億円300万円

この表を見ると、配当金生活にはかなり大きな元本が必要だと分かります。
たとえば、年間300万円の配当金を得ようとすると、配当利回り3%では1億円の投資元本が必要になります。

もちろん、配当利回りが4%や5%の銘柄を選べば、必要な元本は少なく見えます。
しかし、高配当だから安全とは限りません。

株価が大きく下がった結果、見かけ上の配当利回りが高くなっている場合もあります。
また、業績悪化によって減配される可能性もあります。

そのため、配当金生活を考えるときは、単に利回りの高さだけを見るのではなく、配当が継続できる企業なのか、業績に無理がないのかを確認する必要があります。

FIREに必要な資産額の考え方

FIREを考えるときによく出てくるのが、4%ルールです。

4%ルールとは、ざっくり言えば、資産の4%を初年度に取り崩し、その後も資産を運用しながら生活費をまかなうという考え方です。
この考え方のもとでは、年間生活費の25倍の資産が一つの目安になります。

計算式は次のとおりです。

必要資産額 = 年間生活費 ÷ 4%
つまり、年間生活費 × 25

ただし、ここで大事なのは、4%ルールは「一生絶対に資産が尽きない」という意味ではないという点です。

一般的な4%ルールは、主に退職後30年程度の生活期間を想定して語られることが多い考え方です。
いわゆるTrinity Studyでも、取り崩し率ごとに15年から30年の退職期間を想定して、資産が持続するかどうかが検証されています。
つまり、65歳で退職するなら95歳前後まで、55歳で退職するなら85歳前後まで資産をもたせるようなイメージです。

一方で、FIREのように40代や50代で早期リタイアする場合は、30年では足りない可能性があります。
たとえば40歳でFIREして90歳まで生きる場合、50年分の生活設計が必要になります。
そのため、若くしてFIREを目指す場合は、4%ルールをそのまま当てはめるのではなく、より保守的に考える必要があります。

また、4%ルールは、単純に「生活費30年分の現金を用意する」という計算ではありません。
資産を株式や債券などで運用しながら、毎年一定割合を取り崩していく前提の考え方です。
たとえば、年間生活費240万円で30年暮らすなら、単純計算では7,200万円が必要になります。
しかし、4%ルールでは資産を運用しながら取り崩す前提なので、目安は6,000万円になります。

もちろん、これは将来の運用成績やインフレ率によって大きく変わります。
そのため、4%ルールは「これだけあれば必ず大丈夫」という保証ではなく、FIREに必要な資産規模をざっくり把握するための目安として使うのがよいと思います。

退職後30年程度を一つの目安として考えると、必要資産額は次のようになります。

年間生活費4%ルールで見た必要資産額
120万円3,000万円
240万円6,000万円
360万円9,000万円
480万円1億2,000万円
※30年間の生活期間を想定した場合

この表を見ると、FIREにはかなり大きな資産が必要だと分かります。

年間生活費が240万円なら、必要資産額の目安は6,000万円です。
年間生活費が360万円なら、9,000万円が目安になります。

4%ルールは、米国で過去の株式・債券データをもとに研究された取り崩し率の考え方と関係があります。代表的な研究として、Bengenによる安全な取り崩し率の研究や、いわゆるTrinity Studyが知られています。

ただし、4%ルールは絶対的な正解ではありません。
もともとは米国市場の過去データを前提にした考え方であり、日本でそのまま使えるとは限りません。また、将来の運用成績、為替、税金、インフレ、寿命、医療費、生活費の変化によって、必要な資産額は変わります。

そのため、4%ルールはあくまで目安として使い、実際にはより余裕を持った資産設計を考えることが大切です。

出典:William P. Bengen “Determining Withdrawal Rates Using Historical Data”、Trinity Study “Retirement Savings: Choosing a Withdrawal Rate That Is Sustainable

フルFIREとサイドFIREでは必要額が大きく違う

FIREを考えるときは、フルFIREとサイドFIREを分けて考えることが大切です。

フルFIREは、生活費の大半を資産収入や資産の取り崩しでまかなう考え方です。
この場合、必要な資産額はかなり大きくなります。
たとえば、年間生活費が240万円の場合、4%ルールで考えると必要資産額は6,000万円です。

一方で、サイドFIREの場合は、生活費の一部を労働収入や副業収入で補います。
たとえば、年間生活費が240万円でも、そのうち年間120万円を仕事や副業で稼げるなら、資産からまかなう必要がある金額は残りの120万円です。

この場合、4%ルールで見た必要資産額は次のようになります。

前提資産でまかなう年間金額必要資産額
フルFIRE240万円6,000万円
サイドFIRE120万円3,000万円
※30年間の生活期間を想定した場合

このように、サイドFIREでは必要資産額が大きく下がります。

完全に働かない生活を目指すと、必要な資産額はかなり大きくなります。
しかし、生活費の一部を投資収益でまかなうだけでも、働き方の自由度は高まります。

個人的には、いきなりフルFIREを目指すよりも、まずはサイドFIRE的な状態を目指す方が現実的だと思います。
投資による配当金や取り崩し、副業収入、ブログやYouTubeなどの収益、そして本業収入。
これらを組み合わせることで、一つの収入源だけに依存しない生活に近づけるからです。

配当金生活の落とし穴

配当金生活には魅力があります。
資産を保有しているだけで定期的にお金が入ってくるというのは、精神的にも大きな安心材料になります。

ただし、配当金生活にはいくつかの落とし穴があります。

物価インフレのリスク

まず注意したいのが、物価インフレです。

今の生活費が年間240万円だったとしても、将来も同じ金額で生活できるとは限りません。
食費、光熱費、家賃、医療費、保険料などが上がれば、必要な生活費も増えます。

配当金が毎年同じ金額だったとしても、物価が上がれば実質的な価値は下がります。
たとえば、年間120万円の配当金を受け取っていたとしても、物価が上がれば、その120万円で買えるものは少なくなります。

配当金生活を考えるなら、今の生活費だけではなく、将来の生活費上昇も考える必要があります。

減配リスク

次に、減配リスクです。

配当金は企業が支払うものなので、企業業績が悪化すれば減配されることがあります。
場合によっては、無配になることもあります。

高配当株に集中していると、減配が起きたときに生活設計が大きく崩れる可能性があります。
特に、生活費の多くを配当金に依存している場合、減配は単なる投資成績の悪化ではなく、生活費そのものへの打撃になります。

そのため、配当金生活を目指す場合でも、特定の銘柄や業種に偏りすぎないことが重要です。

株価下落リスク

配当金を受け取れていても、株価が大きく下がることがあります。
たとえば、年間配当金が安定していても、保有株の評価額が大きく下がれば、資産全体の安心感は下がります。

配当金だけを見ると安定しているように感じても、元本部分は日々変動します。
特に、リタイア後に資産を取り崩す場合、相場が大きく下がっている時期に売却せざるを得ないと、資産寿命が短くなる可能性があります。

配当金生活を考えるときは、配当収入だけでなく、資産全体の値動きも含めて考える必要があります。

高配当利回りの罠

高配当利回りの銘柄は魅力的に見えます。
しかし、利回りが高いからといって、安全とは限りません。

配当利回りは、株価に対する配当金の割合です。
そのため、株価が大きく下がると、見かけ上の配当利回りが高くなることがあります。
つまり、高配当利回りに見える銘柄の中には、市場が業績悪化や減配を警戒して株価を下げているものもあります。

配当利回りだけを見て買うと、配当金以上に株価下落で損失を出す可能性があります。
高配当株を選ぶときは、利回りだけでなく、利益、キャッシュフロー、配当性向、財務状況、事業の安定性なども確認した方がよいと思います。

税金の影響

配当金には税金も関係します。

NISA口座で保有する上場株式等の配当金は、一定の条件を満たせば非課税になります。
ただし、NISA口座で買った上場株式の配当金を非課税にするには、受取方法を「株式数比例配分方式」にする必要があります。金融庁の資料でもこの点は明記されています。

一方、課税口座で受け取る上場株式等の配当金には、原則として税金がかかります。
金融庁や国税庁の資料でも、上場株式の配当金に関して、復興特別所得税を含めた税率として20.315%が示されています。

たとえば、年間100万円の配当金があっても、課税口座では税引き後の手取りは約80万円になります。

配当金生活を考えるときは、税引き前の金額ではなく、実際に手元に残る金額で考える必要があります。

出典:金融庁「NISAを利用する皆さまへ」、国税庁「No.1331 上場株式等の配当等に係る申告分離課税制度」、J-FLEC「少額投資非課税制度 NISA

配当金だけでなく、取り崩しも含めて考える

配当金生活という言葉には、分かりやすい魅力があります。
資産を売らずに、配当金だけで生活する。
この形が実現できれば、とても安定しているように見えます。

しかし、現実には配当金だけで生活費をすべてまかなうには、かなり大きな資産が必要です。
また、配当金にこだわりすぎると、高配当株に偏ったポートフォリオになりやすいという問題もあります。

そのため、FIREやサイドFIREを考えるときは、配当金だけでなく、資産の一部取り崩しも含めて考えた方が現実的です。

たとえば、次のような組み合わせです。

収入・資金源役割
配当金定期的な収入源
投資信託・ETFの取り崩し必要に応じた生活費補填
副業収入資産への依存度を下げる
本業収入安定した生活基盤
生活費の見直し必要資産額を下げる

FIREを目指すうえでは、収入を増やすことだけでなく、生活費を下げることも重要です。

年間生活費が360万円なら、4%ルールで必要な資産額は9,000万円です。
しかし、年間生活費を240万円に抑えられれば、必要資産額は6,000万円になります。

生活費が下がれば、必要な資産額も大きく下がります。

つまり、FIREは単に投資で大きく増やす話ではなく、支出管理、収入源の分散、投資方針の設計を組み合わせて考えるものだと思います。

いきなりフルFIREよりも、まずは生活の自由度を上げることが現実的

FIREという言葉を聞くと、どうしても「仕事を辞めること」が目的のように見えます。

しかし、実際には、完全に仕事を辞めなくても、資産収入があるだけで生活の自由度は上がります。

たとえば、年間配当金が3万円でも、月に換算すれば2,500円です。
年間配当金が12万円なら、月1万円です。
年間配当金が24万円なら、月2万円です。

これだけで生活できるわけではありません。
しかし、通信費、光熱費の一部、ペット用品代、趣味の費用などを補うことはできます。

資産収入が少しずつ増えていけば、心理的な余裕も生まれます。

いきなり配当金だけで生活しようとすると、必要な資産額の大きさに圧倒されてしまいます。
しかし、まずは月1,000円、月5,000円、月1万円の資産収入を目指すと考えれば、現実的な目標になります。

FIREは遠い目標かもしれません。
それでも、資産収入を少しずつ増やすことには意味があります。

完全なリタイアを目指すというより、生活の選択肢を増やすために投資を続ける。
この考え方の方が、多くの人にとって取り入れやすいと思います。

まとめ:FIREはゴールではなく、選択肢を増やす手段

配当金生活やFIREには、大きな魅力があります。
株式や投資信託などの資産から収入を得られるようになれば、働き方や生活の自由度は高まります。

ただし、配当金だけで生活するには、かなり大きな資産が必要です。

配当利回り3%で年間300万円の配当金を得ようとすると、単純計算で1億円の投資元本が必要になります。
また、4%ルールで考えても、年間生活費240万円なら6,000万円、年間生活費360万円なら9,000万円が一つの目安になります。

さらに、配当金生活には、物価インフレ、減配、株価下落、高配当利回りの罠、税金といったリスクもあります。

そのため、FIREを考えるときは、配当金だけに頼るのではなく、取り崩し、副業収入、本業収入、生活費の見直しを組み合わせて考えることが大切です。

FIREは、仕事を辞めることだけが目的ではありません。
資産収入を増やし、生活の選択肢を増やすための考え方です。

いきなり完全なFIREを目指す必要はありません。
まずは少額でも配当金や資産収入を増やし、自分の生活にどれくらい余裕が生まれるのかを確認していくことが大切だと思います。

投資は、未来の自分に選択肢を残すための手段です。
配当金やFIREも、その延長線上にある考え方として、無理のない範囲で向き合っていくのがよいと思います。


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