JPX総研、暗号資産偏重銘柄のTOPIX新規追加を見送りへ|企業と投資家への影響を考える

株式会社JPX総研は、2026年4月3日に「特別注意銘柄等の取扱いについて」を公表しました。
その中で「今般、当分の間、主たる資産を暗号資産とする銘柄について構成銘柄への新規追加を見送ります」との一文が記載されており、波紋を呼んでいます。

今回の対応を決めた理由としてJPX総研は、
(1)特定の資産を主たる資産として保有している銘柄が日本においても近年新たに見られるようになっているところ、指数への新規追加後の取扱いの変更は連動運用などへの影響があることから、その取扱いには慎重を期す必要があること
(2)海外主要指数において新規追加の見送りや指数上の取扱いに関する検討が行われていること
の二点を挙げており、TOPIXの投資機能性や安定性の維持のため、当分の間は対応が必要との見解を示しています。

(1)について、国内企業の具体的な例を挙げると、2026年4月4日現在、メタプラネット(3350)は40,177 BTCを保有しており、3月31日時点での累計保有分の平均購入価格は約1551万円、累計の購入総額約6233億円に達したとされています。
このように、主たる資産を暗号資産とする企業が今後も現れることが予想されており、そういった足元の状況を見て、今回の取扱いの公表に踏み込んだのではないかと考えられます。

(2)については、世界的な株価指数を提供するMSCI(モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル)などの方針を指していると思われます。
MSCIは2026年1月、デジタル資産保有が総資産の50%以上を占める企業について、即時の全面除外は見送った一方、追加やサイズ区分変更は先送りし、より広い再検討に入ると公表しており、企業の暗号資産保有に対して慎重な姿勢を取る風潮が世界的に強まっています。

なお今回の取扱いについては、TOPIX(東証株価指数)以外の定期入替を行う指数についても適用の対象となる一方、すでに指数を構成している銘柄には適用しないとされており、またこの案自体も現時点では未確定のため、現状すぐに何か影響があるというわけではありません。
ですが、もし将来的にこの取扱いが正式に決定された場合、暗号資産に偏った資産構成を行っている企業にとっては、逆風となる可能性が高いです。

では、当ルールの決定によって具体的にどのような影響が生じるのか、考えてみたいと思います。

  1. 既存採用銘柄については、直ちに対応を取る必要はない一方で、上述のような世界的潮流を考慮して、過度の暗号資産保有を避ける企業も出てくると考えられます。そのような総資産の内訳の変動が株価に与える影響は決して小さくないでしょう。
  2. 今後、暗号資産保有比率を高めていく銘柄については、指数に組み込まれることを考慮して本業資産を厚くしたり、現預金や他資産を増やすなどの新たな経営方針を打ち出すか、それともあえて指数のことは考えず、暗号資産保有比率をさらに高めて独自路線を追求するか、という選択を迫られることになるでしょう。
  3. 指数採用を成長材料として見込んでいた銘柄については、総資産に対する暗号資産の比率を調整することで、指数採用の基準を満たす必要が出てきますので、事業方針の変更を少なからず余儀なくされると思われます。そうなると、当初の成長シナリオが実現できないことによる投資家の期待剥がれが起こる可能性があります。

今後投資家が注目すべき点は以下の5つです。

  • 5月7日午前9時までの意見募集で反対意見がどの程度出るか
  • 取扱いが正式決定されるかどうか
  • “主たる資産” の判定基準が今後どこまで明確化されるか
  • TOPIX以外の指数についてどの範囲まで適用されるか
  • 暗号資産以外の特定資産保有企業へ議論が広がるか

MSCIは「デジタル資産企業だけでなく、投資会社的な性格を持つ企業全般の扱い」を再検討するとしています。そのため、JPX総研の今後の対応についても、暗号資産だけの話で終わるとは限らないと考えておくべきでしょう。

なお今回のJPX総研の素案が示しているのは、暗号資産そのものの善悪ではなく、TOPIXをはじめとする指数の投資機能性と安定性をどこまで維持するか、という問題です。
実際、素案では既存構成銘柄を据え置いたうえで、新規銘柄追加の見送りが主題となっており、指数側が構成銘柄の変更に対して慎重な姿勢を明確化したと見るべきでしょう。

今後は、5月までに提出された意見を受けて当初の素案からどこまで内容が修正されるのか、また暗号資産に限らず、特定資産に偏った企業全般へ議論が広がるのかを注視していく必要がありそうです。

コメント